糖尿病・内分泌専門医の勉強ノート

糖尿病・内分泌専門医による日々の勉強記録です。

血糖管理の次世代指標:Variation(変動値)について

解析, アナリティクス, ビジネス, 図, コンピュータ, コンセプト, データ, デスク, デバイス

 

目次

  1. 本日のTake Home Message
  2. Variationってなに?
  3. Variationのいろいろな指標 
  4. 糖尿病治療におけるVariationの重要性 
  5. さいごに

 

今日は糖尿病業界ではお馴染みの「Variation」について綴りたいとおもいます

 ついでにNoteの方にはもう少し平凡なかんじで書きました

note.com

 

1.本日のTake Home Message

  • Variationは全体におけるデータの「ばらつき」のこと
  • 変動をあらわす指標はいくつかある
  • とくに糖尿病ではVariationが重要な予後因子の1つである 
  • いずれ変動指標をアウトカムに入れるのが当たり前の時代がやってくる!?

 

2.Variationってなに?

統計でいうVariation (Variability)の意味は一般的な意味と違って以下のような感じです(きっと英語の方がイメージしやすいかと、、、↓) 

Variability refers to how spread scores are in a distribution out; that is, it refers to the amount of spread of the scores around the mean.(Variabilityとは、データがどのように分布しているか、つまり、平均値を中心としたデータの広がりのこと)

Measures of variability - Maths - LibGuides at La Trobe University

latrobe.libguides.com

 

つまり、「HbA1c 7%とか7.5%などの1回だけの値ではなく、それら全てを全部を足し合わせて出た平均値から、それぞれの値がどれだけ離れているのか」を表す指標です。ようは振れ幅が常に大きいほどVariationも大きいという意味です。

 

みんなが知っておくべき、Variationの指標としては分散(Variance)標準偏差 (Standard Variation ) です。たしか、統計の授業でやりましたね!

 

bellcurve.jp

 

3.Variationのいろいろな指標 

分散と標準偏差以外に、糖尿病業界でよく用いられている変動指標の1つに変動係数 (coefficient of variation: CV)があります。

変動係数 (CV)

標準偏差を平均値で割った値のことで、単位の異なるデータのばらつきや、平均値に対するデータとばらつきの関係を相対的に評価する際に用いる」

 

ちょっと意味わからん。。。。

 

ですが、統計WEB大先生にひじょ~にわかりやすい説明がされているため、是非チェックしてみてください↓(所要時間3分)

bellcurve.jp

 

くわえて、最近は標準偏差や変動係数に加えて、「variability independent of mean (VIM) *1」「average real variability (ARV)*2 」 といった指標も研究に用いられています

 

*1 variability independent of mean (VIM)の計算法

 *2 average real variability (ARV)について

pubmed.ncbi.nlm.nih.gov

stats.stackexchange.com

 

4.糖尿病治療におけるVariationの重要性 

もしかしたら、糖尿病を専門としない先生で、「測定値なんて毎回ぶれるのが当たり前だし、意味あるの?」という疑問や、「とにかく計算可能な指標を統計ソフトにぶちこんで、有意差が出ないか検証しているだけでは?」なんて思う方も。。。?

 

ですが、糖尿病では血糖値のVariationを最小限に抑えることが、血管合併症を予防するには非常に大事であることは明らかになってます。実際に、1型糖尿病の血糖目標にもすでに「血糖変動指標」が導入されております。これは、血糖値の急降下が網膜症増悪のリスクになることを知っている方であれば、さらに納得がいくはずです。

 

dm-rg.net

 

5.さいごに

このような、「Variation」を重んじるようになった背景には、血糖測定器の進歩により血糖値が24時間測定できるようになったことで、24時間血糖測定する器械により変動が測定可能になったことが挙げられます。他にも、24時間測定することに意義をもたれている測定値としての代表例が「血圧」です。そして、血圧も24時間モニターできる器械が開発されています。

 

もちろん、証明されているのは、これらの疾患におけるVariationと予後と「関連」についてのみで、「因果関係」はまだ不明確かもしれません。ですが、このような24時間モニター可能なIot等の機器が普及し、健常人の方々のデータも得られるようになれば、個々に関する知見がさらに深められるでしょう。

 

もしかしたら、将来は健診で一回測定する値を会社に提出するだけではなく、24時間の変動を測定したIotデータまでも提出が求められる時代がくるかもしれませんね(そんなの私はちょっと嫌ですが…)