内分泌専門医による脂質管理ガイドライン
Lipid Management in Patients with Endocrine Disorders: An Endocrine Society Clinical Practice Guideline
Connie B Newman et al
The Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism, Volume 105, Issue 12, December 2020, Pages 3613–3682, https://doi.org/10.1210/clinem/dgaa674
19 September 2020
・はじめに
アメリカの内分泌専門医による脂質管理ガイドラインをまとめました。
その前に日本のGLを一度さらっとおさらいしてからの方がより勉強になります。
日本のGLを知った上で他の国のGLをみてみると面白い発見があるはずです!
個人的には特に1型糖尿病に注目してほしいです。
糖尿病性網膜症を保つ場合の脂質管理の考え方も重要です。
また、「10. 更年期障害とホルモン補充」はつい最近修正が入りました(別記事で紹介予定です)
・ポイント
【脂質評価と治療概要】
・10年動脈硬化性心血管疾患リスク算出(日本では吹田スコア)による心血管リスク評価を行う
・海外では冠動脈カルシウム測定によるリスク評価が確立
・濃厚な家族歴があればリポ蛋白(a)を測定
・空腹時TG値が500mg/dLなら膵炎予防のために薬物療法
・スタチン投与していてもTGが150mg/dL以上、動脈硬化性心血管系疾患または糖尿病に加えて2つの追加危険因子を有するならEPAを追加(4g/日)
・EPAが入手できない場合にはフィブラートを代替とする
・TG >150mg/dL~499mg/dL では、胆汁酸吸着剤の開始前と開始後にTGをチェックし、500 mg/dl以上では禁忌
【2型糖尿病】
・2型糖尿病と他の心血管危険因子を有する成人では、心血管リスクを低減するために、LDLを70mg/dL未満を目標に低下 (日本では「2次予防」においてのみです:記事の最後に補足で説明↓)
・確立された心血管疾患または複数の危険因子を有する2型糖尿病では、LDLは55mg/dL未満が望ましい
・2型糖尿病で網膜症合併していれば、網膜症の進行を抑えるために、スタチンにフェノフィブラートを加える(TG増加の程度に関係なく)
・2型糖尿病でも、75歳以上の患者では、スタチンの継続・開始について、心血管系疾患リスク、予後、ポリファーマシー、および患者の希望など柔軟に決める
【1型糖尿病】
・1型糖尿病で、40歳以上 and/or 糖尿病罹病期間20年以上 and/or 細小血管合併症 and/or CKD G1~4 を有するなら、心血管リスクスコアにかかわらず、LDL低下目標にむけてスタチン開始
・CKDがある場合、アトルバスタチンとフルバスタチンを除くすべてのスタチン系薬剤は用量調整が必要
・1型糖尿病で、肥満を伴う1型糖尿病、またはTGが高く、HDLが低い成人では、心血管リスクを低減するために、心血管リスクスコアに関わらずスタチン治療を推奨
・1型糖尿病で、糖尿病性網膜症を有する成人では、心血管リスクスコアに関わらず、心血管リスクを低減するためにスタチン療法を推奨
【甲状腺疾患】
・甲状腺機能低下症は、コレステロールとTGの両方を上昇させる
・甲状腺機能亢進症の患者では、患者が甲状腺機能低下症になってから脂質パネルを再評価することを推奨
・LDLの変化は、甲状腺機能が正常になってから3ヶ月という早い時期に観察される
・顕性甲状腺機能低下症の患者では、脂質プロファイルをより正確に評価するために、患者が甲状腺機能正常になるまで高脂血症の治療を行わない
・高脂血症を伴う潜在性甲状腺機能低下症(TSH 10mIU/L未満)の患者では、LDLを下げる手段として、サイロキシン治療を検討する。ただし、 患者の年齢や全身状態、甲状腺刺激ホルモンの抑制の可能性、心血管疾患の有無などを考慮するべき。
【クッシング】
・クッシング症候群が持続している成人では、LDLを第一目標とし、LDLが70mg/dL以上の場合は治療を検討
・クッシング症候群でミトタン治療を受けている患者は、治療により二次的な脂質異常症を発症することが多い
・脂質低下療法は、基礎となる悪性腫瘍がある場合など、余命が限られている患者には適切でない場合がある
【成長ホルモン分泌異常】
・成長ホルモン欠乏症の成人患者では、心血管リスクを減らすためにLDLを下げる目的でのみ成長ホルモン補充を行うことは推奨しない
・成人の先端巨大症では、成長ホルモン過剰症の治療前と治療後に通常の脂質プロファイルを測定することを推奨
・PCOSの女性では、心血管リスクを評価するために、診断時に空腹時スクリーニング脂質パネルを取得することを推奨
・ PCOSでは、高TG血症が最も多い (Check !!!)
【閉経後】
・閉経後の女性では、ホルモン療法ではなく、スタチン療法で脂質異常症を治療することを推奨
・ホルモン療法を受けている閉経後の女性で、他の心血管疾患の危険因子がある場合は、心血管リスクを低減するためにスタチン療法を推奨
・補足
1.吹田スコアについて
私はいつもiphone APPで計算させていただいています
(慣れれば患者さん1人あたり1分くらいでいけます)
2.2型糖尿病の脂質異常症
日本では「2次予防」において、なおかつ家族性高コレステロール血症と急性冠症候群で、糖尿病でハイリスク病態を合併している場合にのみLDL 70 mg/dlを目標とされている。糖尿病のハイリスク病態として具体的には、非心原性脳梗塞、末梢動脈疾患(PAD)、慢性腎臓病(CKD)、メタボリックシンドローム、喫煙であり、ほとんどの2型糖尿病患者でどれかは当てはまるものである。
・ガイドラインの具体的内容
1. スクリーニングと心血管疾患のリスク評価
1. 脂質の測定
- 1.1
内分泌疾患のある成人では、TG値の評価とLDL算出のために脂質パネルを推奨 (1⊕⊕⊕O)
Technical Remarks:
- 非空腹時の脂質パネル(*)は、初期のスクリーニングとして受け入れられる。
- TG上昇時や遺伝的な脂質異常症が疑われる場合は、空腹時の脂質パネル検査を繰り返す
- リポ蛋白(a)の測定は、空腹時でも非空腹時の検体でもOK
*脂質パネル:血漿または血清中の総コレステロール、TG、HDL、LDLをまとめて測定するパネル
- 1.2
Pooled Cohort Equationsを用いた10年動脈硬化性心血管疾患リスク算出など(日本では吹田スコア)、従来の危険因子を評価して心血管リスク評価を行うことを推奨(1⊕⊕⊕O)
- 1.3
境界域または中間リスク(10年アテローム性動脈硬化性心血管疾患リスク5%~19.9%)の内分泌疾患の成人で、特にリスクを高める要因が追加されており、スタチン治療 and/or 他の予防的介入の決定が不確実な場合には、共有の意思決定に役立てるために冠動脈カルシウムを測定する (2⊕⊕⊕O)
(日本ではまだ一般的ではない)
- 1.4
早期の動脈硬化性心血管系疾患の家族歴、または動脈硬化性心血管系疾患の個人歴、または高リポ蛋白(a)の家族歴を有する成人患者では、短期および生涯の動脈硬化性心血管系疾患のリスクとLDL低下療法を強化する必要性についての意思決定を行うために、リポ蛋白(a)を測定(2⊕⊕OO)
2. 高TG血症
- 2.1
空腹時TG値が500mg/dLを超える成人では、膵炎予防のために食事療法や運動療法に加えて薬物療法を行うことを推奨(1⊕OOO)
Technical Remarks:
- TG値が1000mg/dL(11.3mmol/L)を超える患者では、薬物療法では十分な効果が得られないことが多く、そのため、糖尿病のコントロール、食生活の改善、減量が不可欠
- 2.2
TG誘発性膵炎の患者では、TG値を低下させるための第一選択療法として、急性期のプラズマフェレーシスを使用することは推奨されない(2⊕OOO)
Technical Remarks:
- プラズマフェレーシスは、TG値が異常に高い人(例:10,000mg/dL 以上)や、妊娠中などの極めてリスクの高い状況など、従来のTG低下方法に反応しない人に有用
- 2.3
糖尿病のない患者で、TG起因の膵炎がある場合、インスリン注入を日常的に使用しないことを提案する。(2⊕OOO) (ちょっとこの意味はわかりませんでした、、、)
Technical Remarks:
- コントロールされていない糖尿病がある場合は、グルコースレベルを正常化するためにインスリン療法を行うべき
- 2.4
スタチンを投与していてもTG値が150mg/dL以上と中等度に上昇しており、動脈硬化性心血管系疾患または糖尿病に加えて2つの追加危険因子を有する成人では、心血管系疾患のリスクを低減するために、EPAを追加する(2⊕⊕⊕O)
Technical Remarks:
- リスク因子には、従来のリスク因子とリスクを高める
- EPAの投与量は4g/日
- EPAが入手できない、または入手しにくい場合は、フィブラートを検討するのが妥当
- 2.5
TGが上昇している患者(>150mg/dL~499mg/dL)では、胆汁酸吸着剤(日本だとコレバイン)の開始前と開始後にTGをチェックする(2⊕OOO)
Technical Remarks:
- TGが500mg/dL(5.6mmol/L)以上の場合、胆汁酸吸着剤は禁忌
(コレバインの禁忌事項には入っていないが、コレバインは肝臓でのVLDL合成が高まるリスクがある。コレバインの使い方は以下も参考になります↓)
https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/useful/doctorsalon/upload_docs/130757-2-54.pdf
3. 2型糖尿病
- 3.1
2型糖尿病と他の心血管危険因子を有する成人では、心血管リスクを低減するために、生活習慣の改善に加えてスタチン治療を推奨 (1⊕⊕⊕⊕)
Technical Remarks:
- 動脈硬化性心血管系疾患を有する患者、または動脈硬化性心血管系疾患の危険因子やリスク増強因子を有する患者には、高強度のスタチンを選択すべき
- 妊娠中または妊娠しようとしている女性には、スタチンを使用すべきではない
(当たり前だが重要!)
- 75歳以上の患者では、スタチン治療の継続または開始は、動脈硬化性心血管系疾患のリスク、予後、相互作用する可能性のある薬剤、ポリファーマシー、精神的健康、および患者の希望に合わせる
- 3.2
2型糖尿病と他の心血管危険因子を有する成人では、心血管リスクを低減するために、LDLを70mg/dL未満を目標に低下させる(2⊕OOO)
Technical Remarks:
- LDLが70mg/dL以上の場合は、生活習慣の改善に加えてスタチンを追加すべき
- 確立された心血管疾患または複数の危険因子を有する患者では、LDLは55mg/dL未満が望ましい
- スタチン系薬剤でLDLの目標値に到達しない場合、追加治療(エゼチミブ、PCSK9型阻害剤)が必要となる場合がある
- 3.3
LDL低下目的でスタチンを投与している2型糖尿病の成人で、TGが150mg/dL以上、さらに2つの伝統的な危険因子またはリスク増大因子がある場合には、心血管リスクを低減するためにEAPを追加 (2⊕⊕⊕O)
Technical Remarks:
-EPAは 4g/日
-EPAが入手できない、または入手できない場合は、フェノフィブラートのようなフィブラートを検討することが妥当
- 3.4
慢性腎臓病ステージ1~4、腎移植後の成人の2型糖尿病患者では、心血管リスクスコアに関わらず、心血管リスクを低減するためにスタチン療法が提案される (2⊕OOO)
Technical Remarks:
- スタチンを選択する際は、スタチンの腎クリアランスを考慮する。ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンはすべて腎臓で少なくとも部分的にクリアランスされるが、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチンは肝臓でクリアランスされる。
- アトルバスタチンとフルバスタチンを除くすべてのスタチン系薬剤は、慢性腎臓病では用量調整が必要
- 3.5
2型糖尿病で糖尿病性網膜症のある成人では、網膜症の進行を抑えるために、スタチンに加えてフィブラートを提案 (2⊕OOO)
(これあまり知られていないことですが、抑えておきたい点です)
Technical Remarks:
- この推奨はTG値に関係なく適用
- フィブラートはフェノフィブラートが望ましい
4. 1型糖尿病
- 4.1
40歳以上 and/or 糖尿病罹病期間20年以上 and/or 細小血管合併症を有する1型糖尿病の成人では、心血管リスクを低減するために、心血管リスクスコアにかかわらず、スタチン治療を推奨 (2⊕OOO)
Technical Remarks:
- LDLが脂質低下管理における主要ターゲット
- LDLが70mg/dl(1.8mmol/L)以上の場合に治療を検討
- 4.2
ステージ1〜4の慢性腎臓病を有する1型糖尿病の成人では、心血管リスクスコアに関わらず、心血管リスクを低減するためにスタチン療法を推奨 (2⊕OOO)
Technical Remarks:
- LDLが脂質低下管理における主要ターゲット
- LDLが70mg/dL以上の場合に治療を検討
- スタチンを選択する際には、スタチンの腎クリアランスを考慮する必要がある。ピタバスタチン、プラバスタチン、ロスバスタチンはいずれも少なくとも部分的には腎臓でクリアランスされるが、アトルバスタチン、フルバスタチン、ロバスタチン、シンバスタチンは肝臓でクリアランスされる(前述)
- アトルバスタチンとフルバスタチンを除くすべてのスタチン系薬剤は、慢性腎臓病では用量調整が必要(前述)
- LDLをさらに低下させるためには、必要に応じてスタチンにエゼチミブを加えることができる。慢性腎臓病ではエゼチミブの用量調整は必要なし
- 4.3
肥満を伴う1型糖尿病、またはTGが高く、HDLが低い成人では、心血管リスクを低減するために、心血管リスクスコアに関わらずスタチン治療を推奨(2⊕OOO)
Technical Remarks:
-とはいえ LDLが脂質低下管理における主要ターゲット
-なので LDLが70mg/dL(1.8mmol/L)以上の場合は治療を検討
- 4.4
1型糖尿病と糖尿病性網膜症を有する成人では、心血管リスクスコアに関わらず、心血管リスクを低減するためにスタチン療法を推奨(2⊕OOO)
Technical Remarks:
- LDLが脂質低下管理における主要ターゲット
- LDLが70mg/dL以上の場合に治療を検討
5. 肥満
- 5.1
肥満のある人には、心血管疾患のリスクレベルを正確に判断するために、メタボリックシンドロームの構成要素と体脂肪分布を評価したほうがよい (Ungraded Good Practice Statement)
- 5.2 肥満のある人では、心血管と膵炎のリスクを下げるために、血漿TGを減少させる第一の治療法として、生活習慣の改善を提案(2⊕OOO)
Technical Remarks:
- LDLの減少と高密度リポ蛋白コレステロールの増加は、体重減少をもたらす生活習慣病対策によるTGの減少に比べてわずか
- ライフスタイル療法による肥満の脂質プロファイルの変化が、心血管疾患イベントを減少させることは示されていない
- 5.3
肥満のある個人では、脂質低下療法の使用を導くために、アテローム性動脈硬化性心血管疾患の10年リスクの評価を推奨(1⊕⊕⊕O)
- 5.4 肥満があり、体重減少のために薬物療法を行っている人では、心血管疾患と膵炎のリスクを評価するために、脂質プロファイルの再評価を提案する(2⊕OOO)
Technical Remarks:
- 減量後の脂質測定のタイミングについてはデータがないため、5%の減量後、その後も定期的に、体重が安定しているときに脂質の再評価を行うことを提案
- 5.5 肥満症の人(肥満度 40 以上または 35kg/m2 以上で合併症を有する人)が肥満症手術を受ける場合は、心血管リスクを評価するために、肥満症手術後に脂質プロファイルを測定することを提案する。(2⊕OOO)
Technical Remarks:
- LDL値を低下させるには、吸収不良型の肥満手術法(例:Roux-en-Y胃バイパス)の方が制限型の手術法(例:バンディング、スリーブ胃切除)よりも効果的
- 摂食制限型、摂食阻害型ともに、TGは減少する
- 肥満治療の1~3ヵ月後、その後も定期的に、そして体重が安定しているときに、脂質プロファイルを再評価する
6. 甲状腺疾患
- 6.1
高脂血症の患者では、脂質低下薬による治療の前に、高脂血症の原因として甲状腺機能低下症を除外することを推奨 (1⊕⊕⊕⊕)
Technical Remarks:
- 甲状腺機能低下症は、コレステロール値とTG値の両方を上昇させるが、治療により改善
- 6.2 甲状腺機能亢進症の患者では、患者が甲状腺機能低下症になってから脂質パネルを再評価することを推奨(1⊕⊕⊕⊕)
Technical Remarks:
- LDLの変化は、甲状腺機能が正常になってから3ヶ月という早い時期に観察される
- 6.3
顕性甲状腺機能低下症の患者では、脂質プロファイルをより正確に評価するために、患者が甲状腺機能正常になるまで高脂血症の治療を行わないことを提案(2⊕OOO)
- 6.4
高脂血症を伴う潜在性甲状腺機能低下症(TSH 10mIU/L未満)の患者では、LDLを下げる手段として、サイロキシン治療を検討することを提案(2⊕OOO)
Technical Remarks:
- 患者の年齢や全身状態、甲状腺刺激ホルモンの抑制の可能性、心血管疾患の有無などを考慮
7. 過剰なグルココルチコイド
- 7.1
クッシング症候群の成人患者では、脂質異常症の症例を特定するために、脂質プロファイルのモニタリングを行うことを推奨(1⊕⊕OO)
- 7.2
内因性クッシング症候群が持続している成人では、心血管リスクスコアに関わらず、心血管リスクを低減するために、生活習慣の改善に加えてスタチン療法を行うことを提案(2⊕OOO)
Technical Remarks:
- LDLを第一目標とし、LDLが70mg/dL以上の場合は治療を検討
- クッシング症候群でミトタン治療を受けている患者は、治療により二次的な脂質異常症を発症することが多い
- 脂質低下療法は、基礎となる悪性腫瘍がある場合など、余命が限られている患者には適切でない場合がある
- 7.3
クッシング症候群が治癒した成人の場合、心血管リスクの評価と治療のアプローチは一般集団と同様にする (Ungraded Good Practice Statement)
- 7.4
補充量以上の慢性グルココルチコイド療法を受けている成人では、心血管疾患のリスクが高まるため、脂質やその他の心血管リスク因子の評価と治療を行うことが推奨(2⊕OOO)
Technical Remarks:
- グルココルチコイド療法の脂質と心血管リスクへの影響は、グルココルチコイドの用量、治療期間、基礎疾患・適応症によって異なる
8. 成長ホルモンの分泌障害
- 8.1
成人の成長ホルモン分泌不全症では、脂質異常症を評価するために、診断時に脂質プロファイルを取得することを推奨 (1⊕⊕⊕O)
- 8.2
下垂体機能低下症を伴う成長ホルモン欠乏症の成人では、脂質やその他の心血管危険因子の評価と治療を行うことを提案 (2⊕OOO)
Technical Remarks:
- LDLを第一目標とすべき
- LDLが70mg/dL以上の場合は治療を考慮
8.3
成長ホルモン欠乏症の成人患者では、心血管リスクを減らすためにLDLを下げる目的でのみ成長ホルモン補充を行うことは推奨しない (1⊕⊕⊕O)
- 8.4
成人の先端巨大症では、成長ホルモン過剰症の治療前と治療後に通常の脂質プロファイルを測定することを推奨 (2⊕OOO)
9. 多嚢胞性卵巣症候群
- 9.1
多嚢胞性卵巣症候群の女性では、心血管リスクを評価するために、診断時に空腹時スクリーニング脂質パネルを取得することを推奨(1⊕⊕⊕O)
Technical Remarks:
- 多嚢胞性卵巣症候群は心血管危険因子に伴う
- ホルモン療法前とホルモン療法中に断続的に脂質スクリーニングを実施
- 多嚢胞性卵巣症候群では、高TG血症が最も多い (Check !!!)
- 9.2
多嚢胞性卵巣症候群の女性では、高アンドロゲン血症や不妊症の治療に脂質低下療法を使用しないことを提案(2⊕OOO)
10. 更年期障害とホルモン補充
- 10.1
閉経後の女性では、ホルモン療法ではなく、スタチン療法で脂質異常症を治療することを推奨(1⊕OOO)
Technical Remarks:
- ホルモン療法は、心血管疾患、特に静脈血栓塞栓症と脳卒中のリスクを高める。しかし、心血管疾患の絶対的なリスクは、高齢の閉経後女性に比べて若い女性の方が低い。
- 10.2
ホルモン療法を受けている閉経後の女性で、他の心血管疾患の危険因子がある場合は、心血管リスクを低減するためにスタチン療法を推奨(1⊕⊕⊕⊕)
Technical Remarks:
- ホルモン療法は心血管疾患、特に静脈血栓塞栓症と脳卒中のリスクを増加させる。しかし、心血管疾患の絶対的なリスクは、高齢の閉経後女性に比べて若い女性の方が低い
- 更年期障害はLDLの増加とHDLの減少を伴うことがある
- リスク因子には、従来のリスク因子とリスクを高める因子がある
- 10.3
早期に閉経する女性(40〜45歳未満)では、脂質やその他の心血管危険因子の評価と治療を推奨 (1⊕⊕⊕O)
Technical Remarks:
- 早期閉経は心血管疾患リスクを高める
- 閉経後は動脈硬化性心血管疾患リスクを算出し、経過観察する必要がある
11. 性腺機能低下症とテストステロンの補充と乱用
- 11.1
テストステロン濃度が低い患者では、脂質異常症や心血管疾患リスクを改善するためのアプローチではなく、症状に応じたテストステロン療法を提案 (2⊕⊕OO)
- 11.2
HDLが低い(30mg/dL 未満)患者、特に高TG血症がない場合は、ステロイドの乱用について臨床的または生化学的な調査を行うことを勧める (Ungraded Good Practice Statement)
Technical Remarks:
- 生理的に無理な量のアンドロゲンは、HDLを低下させる